いくつになっても、きれいな肌でいたいから・・・
教えて!赤須先生〜肌のターンオーバーのメカニズムと促進させる方法〜

肌のカサつきやゴワつき、シミ、くすみは、一時的なものから加齢によるものまでさまざまです。実は、これらの症状には肌の生まれ変わり=ターンオーバーが深く関わっています。今回は、ターンオーバーの仕組みと促進させる方法について、皮膚専門医の赤須先生に伺いました。


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Profile


赤須医院院長
赤須 玲子 先生

山梨大学皮膚科、トロント大学病理学教室を経て、1998年六本木に赤須医院を開設。確かな臨床経験と美容に精通したきめ細やかな診療が定評。専門はニキビ、シミ、ホクロ、スキンケア全般。
著書:「顔そりスキンケア」「2週間でつるつる美肌になる本」(マキノ出版)など。
○医学博士
○日本皮膚科学会専門医
○株式会社シーボン顧問皮膚科医

ターンオーバーの仕組み 編
一言でいうと、「肌細胞の一生」。
細胞が生まれてから剥がれ落ちるまでのことです。

Q そもそも、ターンオーバーとはどういうものですか?

皮膚の細胞は、表皮の基底層でつくられます。これが28日かけて表皮の上の部分に到達し、やがてアカとなって剥がれ落ちます。細胞が新たにつくられてから剥がれ落ちるまでの状態を「ターンオーバー」と呼び、細胞が成長する過程を「角化」と呼んでいます。

このターンオーバーが規則正しく行われていれば、いつまでも肌は明るく、つやがあり、みずみずしく潤って健康な状態を保つことができます。ところが、偏食や睡眠不足、ストレス過多など不規則な生活が続いて肌のターンオーバーに乱れが生じると、古い角質がアカのまま肌に残って新しい皮膚に生まれ変わることができません。これがくすみや肌荒れ、ニキビ、シミなどのトラブルの原因になるのです。

ターンオーバーの周期 編
周期が遅いとくすみやシミが肌表面に残り、
早すぎると弱くて傷つきやすい肌になる。

Q ターンオーバーが遅い場合の原因や、その影響は?

みなさんご存じのとおり、年齢とともにターンオーバーに要する日数は長くなります。
個人差はありますが、20代前半で28日だったものが、30~40代になると45日ほど必要になるといわれています。

ターンオーバーが遅くなると、剥がれ落ちずに古くなった角質が堆積し、見た目にも透明感のないゴワゴワした皮膚になります。このように角層が厚くなり、肌が荒れていたりゴワついていたりすると、基底層で健やかな細胞がつくられにくくなるのです。年齢とともに肌荒れや傷が治りづらくなり、跡が残りやすくなるのもそのためです。

また、角質は皮膚の一番外側にあって、鎧のような役割もしています。皮膚の鎧が崩れた状態になってしまうため、アレルギー物質や微生物、ウイルスなどが侵入し、肌が荒れやすくなるのです。

Q ターンオーバーが早すぎる場合の原因や、その影響は?

反対に、皮膚の炎症や疾患によってターンオーバーが早くなることもあります。

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)という疾患にかかると、基底層でつくられた細胞はわずか5日で剥がれ落ちてしまいます。皮膚がつくられてはすぐに剥がれる状態が続くため、赤い皮膚の上に雲母状の白い薄皮がつくのが特徴です。原因はよくわかっていませんが、皮膚科学会でも患者数が増えているという報告も。「食」をはじめとした生活習慣の欧米化も理由の一つではないかと考えられています。また、発症するときは突然発症するともいわれています。

この疾患を持っていない方でも、アトピー性皮膚炎や敏感肌などで炎症を繰り返したり、かゆみによって皮膚を引っ掻く行為を続けたりすると、肌のターンオーバーが早まってしまいます。その結果、正常な角質細胞がつくられなくなり、外界から微生物が侵入し、内部の水分の蒸発を防ぐためのバリア機能が働きにくくなってしまうのです。

尋常性乾癬や皮膚炎の場合は、皮膚科での治療が必要になります。

ターンオーバーを促進させる方法 編
基本のスキンケア、規則正しい生活、
そして定期的なピーリングを。

Q ターンオーバーを促進させるために有効な成分やスキンケア方法を教えてください。

ケミカルピーリングやシェービングは、余分な角質を除去して新しい細胞の生成に一役買っています。化粧品では、AHA入りのものがそれに相当します。

ターンオーバーを促進するためには、余分な角質を除去するスキンケアが必要となります。ケミカルピーリングや顔のシェービングは、化学的、物理的に角質を剥がす方法です。

また、敏感肌の方にも使えるピーリング剤を用いて、マッサージを行うことで、古い角質を落とし、新しい細胞が生まれやすい状況をつくりだします。結果として、ターンオーバーを促進することができます。

Q ターンオーバーを促進させるために有効な成分やスキンケア方法を教えてください。

普段の自宅でのケアでは、市販のピーリング剤入り化粧品を、週に2~3回程度取り入れるといいでしょう。さらに集中的にケアしたい場合は、2週間毎日行う方法も推奨しています。イベントがあるときや肌のくすみや透明感のなさが気になったタイミングでとくに集中的にケアしてみてください。

また、医療機関でのピーリングでは、使用する酸の濃度が強いため激しい反応が出ます。ターンオーバーの日数に合わせて1か月に1回のペースを目安に取り入れていただくのがいいでしょう。

肌の状態に合わせて、自宅でのケアやエステサロンのケア、医療機関でのピーリングを組み合わせていただくのもいいと思います。

Q 日常生活で気を付けることはありますか?

基本のスキンケア、正しい洗顔や毎日の保湿はもちろんですが、食事や睡眠といった規則正しい生活を続けることも大切です。食事は肌の養分となるものです。バランスよくタンパク質を中心とした食生活を心がけましょう。睡眠についても、肌が再生・回復する夜10時〜翌朝2時のゴールデンタイムにしっかりと休むことが大事です。

さらに紫外線にも注意が必要です。紫外線の影響で皮膚の細胞がダメージを受けることはわかっています。表皮がダメージを受けると、新しく生まれる細胞にも影響を及ぼすと考えられます。そのため、外出時に日やけ止めを塗ったり、日傘や帽子を使用するなど、日頃からの紫外線対策が大切です。

ターンオーバー 番外編〈ピーリングの誤解〉
ピーリングで、「肌が荒れる?」「肌が薄くなる?」は間違いです。

Q ターンオーバーに対する間違った情報や、注意すべき点は?

皮膚科に来られる患者さんの話を聞くと、「角質を取ると肌が荒れる」という間違った情報をお持ちの方に会うことがあります。また、ピーリングは無理やり角質を取ることだと思われている方もいらっしゃいます。

ピーリングで剥離する角質は、不要な角質であり、本来アカとなって落ちるべき細胞です。また、ピーリングを行うと「肌が薄くなる」と勘違いする方も多いようですが、年齢とともに薄くなった表皮は、ピーリングを定期的に行うことによってむしろ厚みを増してくるので、肌にとっては好ましい変化といえます。

ピーリングをした直後の肌はデリケートになっているので、しっかり保湿をすることや紫外線を浴びないことに注意する必要があります。

最後に、赤須先生からのメッセージ

“お肌の曲がり角”といわれる25歳くらいから、肌の老化は始まります。
できることなら、その頃からターンオーバーの周期を乱さないための対策を始めていただきたいですね。

40代、50代以降になると、どうしてもシミやくすみ、ごわつきが出てきます。化粧品を使ってもどうにもならないと諦めるのではなく、ピーリングなどの角質ケアを取り入れてみてください。いくつになっても、諦めずに続けることが美しくなる秘訣です。